リニエンシーレース・・・・それは弁護士の大東泰雄先生が名付けた
談合やカルテルの際のリニエンシー制度の申請の順番を争うレースのことです。
日本では、カルテル・談合が発覚した際の制裁として
9割型は行政処分(排除措置命令+課徴金納付命令)で済まされ、残り1割は刑事罰になります。
(担当者個人と法人、場合によっては代表者も刑事罰の対象です)
(これは国や地域でだいぶ様態が異なり、国によっては100%行政処分だったり100%刑事罰だったりします。)
最近の日本の公正取引委員会による摘発の傾向をみると
・大型カルテル摘発の活性化
・国際カルテル/クロスボーダーカルテル摘発の活性化
・重大案件は躊躇なく刑事事件立件
・課徴金減免制度(リニエンシー)申請で発覚する案件の増加
という傾向がみられるそうです。
先日、当社でも大東泰雄先生によるセミナー『リニエンシー・レースを制する実務』が開催されました。
今日はその時のセミナー内容を紹介します。
そもそも日本のリニエンシー(課徴金減免制度)とはどのようなものなのでしょうか?
それは平成17年の改正独禁法で導入され、平成21年の改正独禁法で拡充された
不正な取引(カルテル・談合)を自主申告し、必要な報告を行った企業に対し、課徴金を減免する制度のことです。
調査開始日前の1番目の申請者は課徴金納付を免除
調査日開始前の2番目~5番目までの申請者は課徴金額を30%減額
調査開始日以降の申請者も課徴金額を30%減額
(最大5社まで適用、調査委開始日以降は最高で3社)
また、課徴金の減免だけでなく、調査開始前の最初の申請者は、実務上、排除措置命令の対象とはならない事例がほとんどであり、刑事告発の対象にもならないことを公取委が公表しています。
導入当時、密告という一種の裏切り行為とも受け取れるこの制度の利用はムラ社会で和を重んじる日本人の気質には会わないという否定的な見方もありましたが、いざ運用を始めると三菱重工の案件を輪切りに申請件数は年々増えてきています。去年2011年は143件でした。
日本に限らずどこの地域でも、1番目の申請者のみ、かなり優遇される制度になっています。
どんなに不正を防ごうとしても、どこかで不正は必ず起こってしまうのは残念ながら有名な事実です。
ということは、大事なのはカルテル・談合の発見の早さですね。
公取委の統計によると、独禁法の対策として
行動記録やスケジュールを確認 18.2%
ノートや手帳の記載の確認 6.5%
pcメール等のデータ確認 9.8%
監査対象部署に事前告知を行っていない 7.0%
というのが、現状の様です。
この従来の方法では到底足りない、カルテルを発見するのに大事なものをほとんど欠いていると大東先生は言っていました。
(昭和のころから習慣的に行われている談合に比べ、カルテルは発見が楽です。)
では何を行ったらいいのでしょうか? その答えが・・・
・メール等の電子データの日常的なモニタリング
・ノート・手帳の監査
・事前予告なしの監査
先生曰く、連絡に多用される電子媒体の日常的なモニタリング、さらに必ず何かしら情報をメモするので業務用以外にも個人的なノート(スケジュール帳など)にも留意すべきであるのと、事前予告をすると、工作され、発見が困難になるので告知は厳禁、だそうです。
中でも個人的なメモ書き、ノートをかなり重視されていて、立ち入りの際には絶対見られるのだそうです。
(大東先生は3年間公取委の検察官として企業への立ち入り検査を行っていたんですよ!)
監査による確認と早期発見は、平成24年の公取委報告書が示したコンプライアンス・プログラム 3つのKのうちの最も重要な一つであり(残り2つは研修等による未然防止と危機管理)、リニエンシー・レースを制する実務になります。
監査ではトップの人にその必要性を理解してもらう必要があり、事前に社内規程を整備、営業担当者との信頼関係が大事になってきます。
その手順は
事前準備⇒対象部門・対象商品の絞り込み⇒監査方法の決定⇒監査の実施⇒フィードバック
というのが一般的です。
不正の痕跡があるというのを前提にして監査を行うというのが大事だそうです。
また、電子媒体で当該文献を削除していたとしても、サーバーには通信が残るので、
企業側の容量が残すのであれば、サーバー保存をした方がいいそうです。
(そうすれば、削除された場合だけでなく、当事者にわからないようにサーバー上で証拠を収集することも可能になりますね。)
膨大な量の電子媒体を調べることになりますが、
キーワードの検索(同一歩調、各社、競合、同業、値上げ、上げる、アナウンス、厳密、読後破棄など)
同業他社のドメイン、名称、略称、イニシャル検索
これまでに、さまざまな会社に立ち入り検査をしてきた大東先生ですが、キーワード検索から突破した案件も少なくなく、さらには独禁法抵触以外の様々な不祥事もキーワード検索から見つけることが多いそうです。
ではここで少し話を変えて、立ち入り検査に入られた場合はどうすればいいのでしょうか?
すぐにリニエンシーの利用を検討することです。
調査開始後のリニエンシーは最大3社までしか受け付けられず、開始前と合わせて5社しか枠がなく、当日にその枠が埋まってしまうことも珍しいことではないので、超特急で対処する必要があるのです。そのためには弁護士とのコネクションやリニエンシーへの理解、あらかじめ対処方針が決まっていることなどが大事になります。
いかがでしょうか?
今日は日本でのリニエンシー制度(課徴金減免制度)のお話でした。
次回は課徴金の額や世界のリニエンシー制度のお話と最近の流行であり、企業が苦しんでいるグローバルリニエンシーについての記事になります。
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