2013年3月21日木曜日

預金封鎖 ~キプロスショック~

EU加盟国で英連邦の一員でもあるキプロスで政府が預金封鎖に踏み切る!・・・かもしれないことが今週初めに話題になりました。

今回の主役であるキプロスの名前を知らなかった方も多いかもしれません。
キプロスはトルコの南に位置する国家であり、ヨーロッパ大陸と中東、アフリカ大陸に囲まれた地中海に位置する小さな国家で、経済的・文化的に関係の深いギリシャが金融危機に陥った影響を強く受けていました。
観光業と金融業が主な産業であり、リゾート地としても有名です。
(1990年代には東欧諸国のマネーロンダリング地として悪名を轟かせましたね・・・・)

かつてはタックスヘイブンとしても有名であり、EUの要望で法人税を上げた今もEU諸国内では最低の法人税率であることから、欧州の金融活動が盛んな地域として知られ、特にロシア関連の投資が活発です。

国民の約8割がギリシャ人でキリスト教、約2割がトルコ系でイスラム教、残り僅かがアルメニア人でキリスト教と言われる、面積9250km²、人口87万人と小規模な国家です。

と以上紹介したのはキプロス共和国と呼ばれる国で、トルコを除く国連加盟国に承認されています。
というのも、実はキプロスは1974年以来、南北に分断されており、南部がさきほどから紹介しているキプロス共和国。北部は北キプロス・トルコ共和国となっています。
南部がギリシャとの関係が深いのに対し北部ではトルコとの関係が深くなっています。
(南部ではギリシャ人が大多数を占めるのに対し、南部ではトルコ人が大多数を占めます)

さて、問題の預金封鎖の危機があったのは南にある方のキプロス。

支援がなければ財政破綻する懸念があったキプロスに対し、EUが100億ユーロ(約130億ドル)の援助を決定。その際の条件として国内の預金者に対し、10万ユーロ以上には9.9%、10万ユーロ未満には6.75%の課税をすることを求めたのです。課税は1回のみで、58億ユーロの歳入が見込まれていました。
そのほかにも支援策には法人税の名目税率を2.5ポイント上昇させた12.5とすること、キプロス政府が管轄する通信・電力事業の民営化検討などが盛り込まれ、経済的に関わりが深いロシアは25億ユーロあると言われるキプロス向け融資の返済期間を5年間延長し2021年とするなどといった取り決めもありました。

支援を受けるための条件で一番懸念されたのは、国内の預金者に対する課税措置
これはキプロス国内の預金者だけでなく、ギリシャやスペインなどの財務が危機的状況にある国民にも衝撃を与えました。
一部の知識人の間では財政が不健康な欧州全土で銀行の取り付け騒ぎが起きるとの声もありましたが、EU当局がキプロスに対するこの措置が例外的であり、他国に適用されることはないと発言したころから、他の国に混乱が波及することはありませんでした。

結果として、キプロス議会が銀行預金課税法案を否決したため、心配されていた国内預金者の負担は回避されましたが、現在もデフォルトを回避するための話し合いが行われてい議会にて預金者に影響が出る方法が採択される可能性も依然として残されています。

さて、なぜキプロスに対し、国内預金に課税するような措置をEU当局は求めたのでしょうか?

その答えを探るためにはキプロスの預金の質を考える必要があります。
実はキプロスの銀行にはGDPの2倍もの預金がなされています。
しかしキプロスのGDPがEUに占める割合はわずか0.2%。
そのような小国家になぜGDPの2倍もの預金があるのでしょうか?

その答えはその巨額の預金が国民ではなく、ロシアマネーを中心としたオフショア金融センターとしての役割からくるものだからです。
2004年にEU加盟する際に国際水準を満たすと約束しながらも現在も不透明な部分が残り、OECDのリストでグレーゾーンの国家というレッテルを貼ら潔白ではないとされています。

最終的に議会で預金課税法案が否決されたのですが、EUの決定が発表される直前からネット経由の取引ができなくなったり、ATMの使用が制限されたりと預金封鎖は実行されていました。
EUからの正式発表があった16日からキプロスないの銀行は休業。
現在も休業中で次の営業日は26日(25日は祝日です!)。

それまでには議会内で解決策が出されるとの見方ですが、
EU中央銀行からは支援策を早急に飲まない限りはキプロス銀行に対する資金供給を打ち切ると圧力がかかり、アナスタシアディアス大統領が緊急会合を開き、解決策を模索しています。


このブログは日本時間21日午前時点での情報で書いています。

現在進行形の時事問題ですので、気になる方はぜひこのニュースを追ってみて下さい!

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