演題:「JV法務の勘所~JV契約の落とし穴を避けるための処方箋~」
日時:2017年5月26日 9:30~12:30
講師:田中勇気 氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー弁護士)
ジョイントベンチャー(以下、JV)とは、複数の企業が共同出資して新規事業を設立することを意味する経営方式です。いくつかの企業が完全に同一化され両者間の経営方針や資本等の摺り合わせが必要となる買収・合併や、資本のやり取りがなく強制力がないため持続性や効果面が不透明な単なる提携に比べ、これらの中間的な位置づけといえるJVは、両方式の良いとこ取りとも言える経営方式であり、近年では東南アジアでの新規事業開拓などで事例が増えています。しかし、一見メリットが多いように見えるJV契約にも、知らなければ気づかない意外な落とし穴が・・・?今回のセミナーでは、特に少数派株主が陥りやすい落とし穴やトラブルについて、弁護士の田中先生に解説して頂きました。
はじめに先生は、「JVは『結婚』ではなく『同棲』である」というJVの仕組みを説明された上で、それゆえに設立後もトラブルのリスクが高いというデメリットを指摘されました。そこで、常に「誰が為のJV契約か?」という認識を持つ必要性を強調されました。そしてJVの組成/経営/株式譲渡/解消の4つそれぞれの勘所について、事例を用いてご説明頂きました。特に一番の要となるJVの組成にあたっては、出資比率の問題など取締役会や株主総会の議決権に関わってくる重要な注意点が多いという点を認識させられました。加えて、さらに細心の注意が必要とされるのは運営ルールの構成についてで、取締役選任権や議決権、拒否権などにおいて少数株主が影響力を維持できるよう、会社法の規定とは異なった工夫のしどころを解説して頂きました。その他、株式の先売権、JV解消時の知的財産の帰属など、実際にトラブルが生じた例とその回避策を網羅的に挙げて頂き、出席者からも質問が相次ぐなど、非常に興味深い内容であったようです。
セミナー全体を通して、自分自身も普段学んでいる会社法を少数株主や中小企業の側から見たときの問題点について考えるきっかけになったと考えています。また、田中先生のセミナーのモットーでもあるという「条文を使わない説明」は、大学の講義とは一味違った実践的な視点に立ったもので、法律を活かすためには条文のみに固執することなく、実際の運用例や背景、問題点も併せて多角的な視点で事例と向き合う必要性を認識させられました。
インターン生 法学部3年
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