昨今の日中政情不安で中国ビジネスのやり方を考え直している方も多いかもしれませんが、
2009年から日本にとっての輸入面でも輸出面でも共に最大貿易相手国であることに変わりはありません。
ビジネス上の紛争は大まかに分けるとその解決方法は訴訟を起こすか仲裁にするかになります。
訴訟は裁判所、仲裁は仲裁裁判所(もしくは仲裁人)に頼ることになります。
しかし、中国との間ではちょっとした行き違いによって、裁判所間の判決が相互に承認されない状態が続いており、仲裁一辺倒になっています。
なぜそんな事態になってしまったのでしょうか?
(ちょっと仕事ミスった~あはは では済まされないですよね?)
今日も日本各地の簡易、地方、高等、最高を問わず多くの裁判所で判決が出されていますが、
この裁判所が判決を下すという行為は国家主権の一形態です。
しかし、当然のことですが、国家主権は原則自国の領域内でのみ執行できます。
ここで原則と表現したのは、相互の判決を承認する国際条約を結んでいれば、日本の判決を日本で執行することはもちろん外国でも執行できるようになります。
日本では民事訴訟法118条の条件を満たせば、外国の判決は日本国内で効力を持つようになります。
その条件とは・・・・
・確定判決であること
・裁判を行った裁判所が裁判管轄権を有すること
・敗訴被告が自衛する機会が与えられたこと
・外国判決の内容及び手続きが日本の公序に反しないこと
・相互の保証があること
の5つです。最後の相互の保証とは日本が外国の判決を自国内で承認する代わりに相手国も自国内で日本の判決を承認し執行することです。
この相互の保証に関しては解釈の余地があるとされており、(外国にもそれぞれの国の事情があるので日本と全く規定が一緒なんてありえないですもんね)
一般的には「相手国の法律の中に日本の民事訴訟法118条と同様に規定があること、コモンローの場合には判決の中に同様の主旨の言及があること」という風に解釈されています。
実は・・・中国には日本の民事訴訟法118条に該当する法律(民事訴訟法265条)が存在します!・・・・・が、現実には日本においては離婚裁判など身分に関する分野を除くと中国の判決を承認しておらず、中国も日本の判決を承認していません。
話は1994年(平成6年)まで遡ります。
1994、中国のとある高級人民法院では日本のある判決及び債権差し押さえ並びに転付命令を承認・執行してよいか、中国最高裁にあたる最高人民法院に問い合わせていました。
その返答は
「中国と日本とは相互に裁判所に判決や決定の承認・執行を許可する2国間条約の締結をせず、また国際条約にも加入しておらず、また相互の相恵関係も存在しない。したがって(旧)民事訴訟法268条により、中国の人民法院は日本の裁判所の判決の承認・執行の許可をしない」
というものでした。
当時の判事によると中国の最高裁は「日本との間には一般的には判決の承認と執行の問題は存在しない」という見解であり、上に書いた回答は当該事件のケースだけに対して出したものでした。
しかし、なぜかこの回答がネット上に公開されてしまい、これが日本の判事の目にも入ってしまったのです。
それがのちに、2003年に大阪高等裁判所が中国山東省の判決に対して、「中国との判決に相互の保証がないので中国の判決を承認しない」という内容の判決を出すことにつながってしまったのです。
以降、現在に至るまで身分の分野をのぞいてそれぞれの判決を承認しない状態にあります。
ということは、中国で紛争が起きた場合には公的機関に頼るならば、仲裁しかない ということになります。
その仲裁ですが、中国ではCIETACと呼ばれる中国国際経済貿易仲裁委員会が一手にになっています。
昨年この委員会の規約が改正されたことでこの名称が記憶に残っている方も多いかもしれませんね。
少し古い2009年のデータになりますが、香港仲裁センターによると
日本商事仲裁協会 19件
米国仲裁協会 836件
国際商業会議所国際仲裁裁判所 817件
香港国際仲裁センター 649件 に比べ
中国国際貿易仲裁委員会 1482件
と圧倒的に取扱数が多くなっています。
日中ビジネスでは仲裁事項を盛り込むのが一般的になってきました。
しかし、なぜ仲裁なのか、どう利用すればいいのか、手続きの流れはどうなのか、
どういう事例があるのか、日本以外のアジア諸国はどう対処しているか。
疑問が残る点が多い方も多いかと思います。
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